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電脳おでん村正店長、
ゆきまるの日常や考察。

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気軽に行われるゲーム開発クラウドファンディングとその懸念

CFで高額資金を集めたレトロゲーマー注目作品が制作費未払いで開発中止!

某有名シューティング風ゲームとして、レトロゲーマーの注目を浴びていた「スチームパイロッツ」の開発費をめぐり、大きな騒動が起きています。

事の経緯に関しましては、Automatonの下記の記事が詳しいので、まずは一読していただけると幸いです。この記事では、騒動の経緯と背景をわかっている前提で私の意見を書かせてもらいます。

クラファンで1000万円集めたシューティングゲーム、制作費用未払いとして開発会社が企画者を訴訟。はたしてゲームは完成するのか(Automaton)

一応事の背景を簡単に説明すると、元コナミのサウンドチーム「矩形波倶楽部」の古川元亮氏が発起人となって開始されたスチームパイロッツ開発プロジェクトは、二度のクラウドファンディングで合計約1100万円の資金調達に成功。しかし開発会社である株式会社PIXEL(以下PIXEL)には二年もの間開発に携われておきながら一円の支払いもなく、今年1月にPIXEL側が開発中止を宣言。なおかつこれまでの開発費を請求するという事態になりました。

今回はこの事件そのものではなく、クラウドファンディングを安易に行う危うさをメインに書いていこうと思います。事件についても若干触れますが、情報収集して細やかに編んだ記事ではないので、予めご了承ください。

近年見られるクラウドファンディングによるゲーム開発費資金集めの変化

CFは言うまでもなく、何かを成し遂げたいのに資金調達ができず、やむを得ずユーザーや共感してくれた方から少額出資を募る資金調達方法です。簡単に言えばカンパですね。

日本の金融機関は、本当にお金を貸してくれません(経験済み)。
社会的に通用する実績でもなければ、起業資金や活動資金を貸してはくれません。
だから日本で起業するには何にせよ自己資金を貯める必要があり、例えば若い頃から起業するには、それこそ実家が太いとかビジネス系の学閥に所属するかという選択肢しかありません。
よって、起業できるだけのアイディアと能力をもつ多くの有能な若者が新卒で大企業に入り、おじさんたちの下でやりたくもない仕事に従事せざるを得なくなったりするわけです。

しかし、そんな状況をインターネットとテクノロジーが一変させました。
ネットで世界に呼びかけることが可能となり、それこそ金融機関でも出してくれないような高額な資金を集めることも可能となったのです。

これは、資金力に乏しく大きな実績がないながらも、優れたアイディアがある人達にとっては福音となりました。

ゲーム開発でも小規模デベロッパーや個人が自分たちが作りたいゲームをCFプラットフォームを通してプレゼンし、開発費を調達することはもはや当たり前の光景となっています。

しかし、一方で「資金を集めたものの、そのお金が何に使われているか分からない」とされるもの、計画を大きく上回った資金が集まったため、募集者が豪遊し始めたとか、あまり良くない噂も耳にするようになりました。

CFの余剰分をどのように扱うかは議論の余地があるでしょうが、少なくともCFで集まったお金は、出資者が呼びかけ人もしくは計画に対して期待を込めて出資したもので、豪遊などに使っていいお金ではありません。

一方で、一切豪遊などしていないのに、CFに大成功したという理由一つでそのようなレッテルが貼られることもあり、なんとなく本人も周囲もCFを売上と勘違いしている人たちが少なからずいるという印象を受けます。

確かに、最近ではこれから発売される商品をCFにて先行発売とし、先着数名に優待価格で販売するというマーケティングなども行われています。これはもはや売上と言ってもいいでしょうし、なんならCFでもなんでもないのですが、プラットフォーム側がビジネスをこのような方向に拡大した結果、様々な誤解を生んでしまっている事実もあります。

例えばレトロゲームで言えば、去年発売された夢幻戦士ヴァリスCOLLECTIONのパッケージ版が、発売決定と同時に開発資金のCFを発表しました。
しかしこれも、販売前から売上を立てる行為に見え、個人的には好きにはなれませんでした。これが本当にCFなのか。予約販売と何が違うのかと。

このように混沌としてきているCFに対する認識の中で、昨今流行りのレトロゲーム風ゲーム、並びにリメイク作品のCFも活発に行われてきています。

今回のスチームパイロッツも、明らかにレトロゲーマーに向けて行われたCFでした。
元コナミの古川元亮氏の名前で募集され、コナミの某シューティングの精神的後継作をうたわれてしまっては、レトロゲーマーとして黙っていられなかった人も多数いたはずです。

結果、目標額だった1000万円の調達に成功し、晴れて開発が始動(正確には再開)することになったのですが、ここにきてこのようなトラブルが起きてしまったのです。

有名人が有名タイトルでCFで出資者を募る「責任」

CF達成の難易度というのは、呼びかけ人の知名度が大きく関わってきます。
逆に言えば、CFは呼びかけ人の社会的知名度や信用をバーターにお金を集める仕組みとも言えます。
つまり、社会的信用を切り売りすれば、信用とお金を交換することもできなくはないのです。

一昨年あたりから、コロナ禍により経営が逼迫した飲食店や宿泊施設、ライブハウスなどがCFを行う様子が見られました。
普段からお店や施設を利用している方、もしくは現状に同情した人たちが出資してくれるでしょうが、一度の成功で味をしめて、二度三度と窮状を訴えても、だんだんお金が集まらなくなっていきます。

これは、資金の限界もありますが、信用の限界でもあります。
状況が改善せずにお金を集めるようになると、周囲の人たちも改善の努力をしていないのでは?と思うわけです。その「またか」まで何回できるかが、まさに信用の量です。

上記が、私がCFという手段に対しリスクと考えている部分です。

最初の記事にも書いた通り、「電脳おでん村正」の開店資金をCFで集めなかったのは、もしやるとしても本当に困った時、もしくは出資してくれたファンの方に完全なカタチで還元できる時であり、店を始める今ではないと判断したためです。

しかし、世の中にはCFを軽く考える人もいて、CFを使えば簡単にお金が集まると思った人が、安易に信用を切り売りする場面が多く見られます。

これは私の話なのですが、ある人が企画を私のところに持ち込んできました。

あまりにも現実離れした企画であり、なおかつ明らかに多額の資金が必要な座組。そんな高額の資金をすぐさま用意することは無理だと告げると、その人は私の知人の著名人と私の名前でCFを集めるように提案してきたのです。

その人は企画はすでに動いていると言っていましたが、動いていると言っても具体的な交渉に入っているわけでもなく、ただ周囲にぼんやりとした企画の話をして、よかったら協力してほしいという程度の話をしているだけでした。こういうのは、ビジネスの中では「仕事をしている」とは言いません。

その上自身では一切出資セず、私の懐かCFでの資金調達をアテにしているという無責任さで、大変呆れた覚えがあります。

CFによる資金調達が一般的となり、このような人が周囲に現れたからこそ、CFは信用の切り売りという認識のない人が安易にCFという手段を使う現状に非常に懸念を抱いております。

逆に言えば、社会が業界に莫大な信用を持っている人間が信用を切り売りする気になればいくらでも換金できてしまうのがCFであるとも言えます。

だからこそ、有名人がCFを募るなら、一般人以上に慎重に行い、資金の使いみちに対しても誠実である必要があるはずなのです。

有名人が誰かの信用を使ってCFを行う危うさ

さて、今回のCFの座組に関してですが、サウンドコンポーザーの古川氏が、ゲーム開発会社の株式会社PIXEL(以下PIXEL)と組んでゲーム開発計画を発表、CFを募りました。

古川氏の知名度と信用に加え、「ホーギーヒューwithフレンズ」でレトロライクシューティングゲーム開発の実績のあるPIXELが組んで制作するということで、信用倍増しでCFを募ったのですから、1000万円という高い壁を超えたのもある意味当然であったかと思います。

しかし、仮に古川氏がアルバムを作るなど、彼自身の才覚だけでCFを募ったらどうでしょう? また、開発がピクセルという実績のある会社でなく、例えば駆け出しの個人開発者であったらどうでしょうか。おそらく1000万円の調達は成功しなかったはずです。

確かに古川氏はゲーム業界の著名人ですが、「ホーギーヒューwithフレンズ」のPIXELがコナミ風シューティングを作るという点にベットした出資者も少なからずいたはずなのです。

1000万という金額は、古川氏の知名度や才覚だけで集まったお金ではなく、PIXEL社の実績も加えたものであることは十分に留意したいところです。

その上で、PIXELに対し支払いがなされていないというのが今回の大問題で、ゲームを制作するための資金をゲーム開発者に渡していないということは、PIXELどころか出資者に対する背任でもあります。CFでなければ出資法に問われる事態になりかねません。

こう俯瞰していくと、古川氏は元よりPIXELの信用を上乗せして高額CFを計画し、達成したお金を私物化するつもりだったのでは? と疑われても仕方ない部分が出てしまうでしょう(そう考えたくはありませんが)。
昨今のコロナ禍で収入が途絶え、支払いが遅れているなどの理由があるかもしれませんが、それならば公的な支援を受けるなり、少なくともPIXELに遅れている理由を説明する必要がありました。

それがないまま現在に至り、PIXELが断腸の思いで開発中止宣言を行うという事態になったのは、出資者はいわずもがな、古川氏のサウンドで育ってきた80年代ゲームキッズたる我々レトロゲーマーにとっても悲しい話であります。

このままピクセルが何も表明しないまま計画中止、または大幅な延期になった場合、古川氏に加えピクセルも信用を失っていたかもしれません。PIXELが早く動いたことは、自社の信用を守る意味で適切であったと思います。

他人のお金を大切にしない人は、絶対にCFを行ってはいけない。他人のお金を大切にしない人とは距離を開ける。

先程私は自分の体験談として、自分で持ち込んだ企画にも関わらず、資金調達を私の名前によるCFで行おうとした人の話をしました。

この手の人は、自分の懐を痛めて出したお金ではないCFや出資金に対して不誠実でな傾向があります。

他人が出してくれたお金だから、本来の用途とは別に簡単に使ってしまうのです。まるで子供のお年玉ですね。だからCFのお金を使い込んでしまったり、本来の用途外で使ってしまったりするのです。

繰り返しになりますが、CFは信用を切り売りする行為で、何度も切れる便利なジョーカーではありません。

まして、今回のような疑惑が発生した場合、募集に際し共同で名前を連ねた人や、出資者に対して多大な迷惑をかけます。だからこそ、CFは慎重に行うべきであり、CFに投資する人も疑わしい計画には安易にお金を出さないことが求められるかと思います。

もっとも、それが著名人であったり、期待の続編だとすると、どうしても出資の誘惑にかられてしまうところですが、それが不誠実なCFを浄化する手立てになるかと思われますので…。

また、CFを自分のやりたいことのために使えない人は、端からCFという手段を使わないという自制心を持ってほしいと思います。それでもやるというなら、計画が未達に終わった時には詐欺師のレッテルを貼られるのも覚悟してほしいと思うのです。

さて、今回のPIXELの開発資金の支払いに対し、古川氏は開発中止の損害賠償として約750万円を要求しました。

あまり悪口は言いたくないのですが、他人の懐をアテにしている人の考え方だなと思ってしまいました。

こういう人たちとどうやって適切な社会的な距離を取るかは、人生を快適に過ごす上で大切なことです。

PIXELの佐々木さんはスチームパイロッツの仕事を受けた経緯として、Twitterでお聞きしたところ、ホーギーヒューwithフレンズで古川氏から楽曲提供を受けていたこともあり、同情もありましたが、仕事の繋がりで断れない状況だったためとおっしゃっていました。

こういう、互いに仕事を介した関係で、口約束だけで仕事を受けてしまうことはよくあることです。
それを迂闊と言うのは少々酷な話です。私も同様の経緯で無料で仕事を受けざるを得なくなったこともあります。なお、無料の仕事を押し付けてきたのは、上記のCFで資金を集めると言った人です。

ちなみにスチームパイロッツのCFは二回行われており、一回目で約800万、二回目で約300万という資金の調達に成功しています。二回目の資金調達は開発会社がピクセルに移行した後、改めて開発の見積もりを算出して求められた不足金の補填が目的で行われたそうです。

シューティングゲーム『スチームパイロッツ』を完成させて、皆様にお届けしたい!(二回目のCF)

PIXELの開発中止の発表に対し、古川氏は発売後の純利益を折半するという考えだったと表明、それがPIXEL側ともコンセンサスが取れたという書き方をしています。

しかし先述のリンク先でも、二回目のCFはPIXELに開発が移行するに際し不足したゲーム制作費を募ると明記してあります。なので、もとより出資者の手前、純利益の折半という理屈は通りません。

仮にPIXELと利益折半の話があったとしても、CFにて制作費と明示したからには、制作費に使わなければならないのです。でなければ完全に背任であり、少なくとも古川氏の手元に入ったであろう900万ほどのお金はどこに使われたのかという話になりかねないわけです。

私がこれまで生きてきた真理として、仕事をタダでやらせる人は、他人の懐をアテにします。これはだいたいワンセットで、やはり他人のお金を大切にしない人の考え方なのです。

古川氏の一連の発言や行為を見ていると、自分の周囲にもいたこの手の人達を想起し、嫌な気分になると同時に、PIXELの佐々木さんの心情に同情してしまいます。

古川氏はスチームパイロッツの前に発表した「ももいろアンダーグラウンド」というゲームもCFで制作資金を集めましたが、こちらも後に製作者とトラブルになったようで、ももいろアンダーグラウンドとサウンドや一部要素が差し替わったDEZATOPIAというゲームが発売される事態になっています。

また、スチームパイロッツにおいてもPIXELの前に開発担当のプログラマーがおり、その方が降板されたためにPIXELにお鉢が回ってきたのだそうです。

このように、古川氏周辺には開発関連のいろんなトラブルが発生していますが、古川氏はコナミ時代の実績と信用において、例えばももいろアンダーグラウンドの時には、彼の側に過失があるとされることはなかったのでしょう(真相はわかりませんので、これ以上の憶測は差し控えますが)。

もうひとつ言えば、先に古川氏が「PIXELに逃げられた」と言えば(それが事実かは別として)、PIXELは追い詰められていたかもしれません。

だからこそ佐々木さんとしては早く動く必要がありましたが、そこには古川氏への少なからず抱いていた憧れやこれまでの交流などで、多くの葛藤があったとお見受けします。気の毒な話です。

なんにせよ、誰も幸せにしないニュースなので、古川氏にはどんな事情があれ、誠実な対応をしていただければと思うと同時に、私個人としてはCFに対しより慎重になろうと思った次第です。

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