クリエイター
MA-X
同人ゲーム作家
ファミリーベーシックから始まるゲーム制作遍歴。B-Cat Softwere代表、MA-Xさんインタビュー
- 半年ぶりのインタビューは、B-cat SoftwareのMA-Xさんにいろいろ聞いてみました!
MA-Xさん、まずは自己紹介をお願いします。 - この度はお声掛けいただき誠にありがとうございます。
同人サークルB-Cat Softwareの代表をしています。 - MA-XさんのこれまでもPC遍歴を教えてください。
- まず最初に謝っておきます。
私はナイコン歴が非常に長かったので、PC遍歴の大半は友人の所有するPCです(笑)
最初のPCですが、これはPCにカウントしても良いのか悩むところではありますが、ファミリーベーシックです。
ファミリーベーシックが発売される直前、実物大のキーボードが裏面に印刷されたチラシが玩具店で配られていたのですが、「プログラマーはブラインドタッチができて当然」という話を雑誌で読んだので、そのチラシを使って約1ヶ月の間、ずっとブラインドタッチの練習をしていました。
そんなファミリーベーシックで初めて作ったプログラムは「モリナガパニック」というゲームです。
タイトルでお察しですが、当時日本を震撼させたグリコ森永事件をモチーフにしたゲームで、落ちているお菓子を拾って食べると毒入りお菓子かどうかを乱数で抽選するという理不尽すぎる内容でした。
次に触れたPCは、友人が購入したPV-7というMSXです。
カシオのMSX参入第一弾で、スペックの低さから「ゲーム専用機」と揶揄され、MSXの生みの親である西和彦氏からも散々言われる事になる不遇な機種ですが、もしもこの機種が存在しなかったら私の人生は大きく変わっていたはずです。それくらい、私にとっては重要な機種です。
最初はBASICでショートゲームを作っていたのですが、ロードランナーを再現しようと挑戦してみたものの、ブロックを大量に掘ると処理落ちが激しくて…。
そんな時、マシン語を使えば処理速度が速くなると知って居ても立ってもいられず、地元の図書館に行ってZ80のマシン語入門の書籍を借りて熟読し、自力でマシン語を習得しました。
当時はアセンブラなどという高価なものなんて買えなかったので、ひたすら大学ノートに手書きでマシン語を書き殴っていました。もう何冊の大学ノートに書き殴ったのか憶えていません。
そして、中学三年生の時に運命の出会いが訪れます。
NECのPC-8801mkIISRと、その所有者であるクラスメイトのK氏です。
彼は、後に私を同人ソフトの世界へと半ば強引に引きずり込み(笑)、一緒に同人サークルを結成する事になったキーパーソンのひとりです。
彼は中学3年生の時のクラスメイトで、きっかけは忘れてしまったのですが、私がゲームが好きでプログラミングもできるという事から何となく意気投合し、彼の家に入り浸ってPC-8801mkIISRのゲームで遊びつつ、「いつか一緒にゲームを作ろう」と青臭い夢を語り合っていました。
ようやくナイコン族を卒業できたのは、高校2年生の秋でした。
夏休みに地元の自動車部品工場でバイトをして作った資金を握りしめて、地元のラオックスでPC-8801FAの展示品を購入しました。
この頃はPC-8801シリーズは完全に下火になっており、店員からも「PC-9801シリーズを購入すべきだ」と何度も言われましたが、迷わずPC-8801FAを購入しました。
自分のマイコンを手に入れた事で、ようやく「友人宅に毎日通い詰めて同人ソフトを作る」というスタイルから脱却し、無我夢中になって同人ソフトを作りました。
この後、社会人になってからPC-9801シリーズやX68000シリーズへと繋がっていくのですが、PC遍歴だけで終わってしまいそうなので、この辺で割愛させていただきます(笑) - これまで遊んだゲームの中で、面白かった、心に残ったゲームの名前と思い出を教えてください。
- 心に残ったゲームと言えば、日本テレネット(ウルフチーム)の「ファイナルゾーン」や「夢幻戦士ヴァリス」、ウルフチームの「YAKSA」ですね。
ゲーム本編以上に力の入ったデモシーン(ビジュアルシーン)は、映像と音楽による演出が素晴らしいだけでなく、厨二病のような台詞(褒め言葉)も最高にシビれるんですよ。
私のように、ウルフチームに脳を焼かれた若者は沢山いるんじゃないでしょうか。
「こんなゲームを作りたかった!」と思ったのは、メサイヤの「重装機兵ヴァルケン」ですね。
ゲームとしても本当に面白かったですし、カットインする演出がとにかくカッコイイ。
画面全体を覆うようなド派手な演出もあれば、銃を撃つ度に薬莢が飛んだり、僅か数ドットで描かれた兵士が主人公のロボットに対して白兵戦を仕掛けてきたり。
とにかく制作陣の拘りがひしひしと伝わってきて、見事なまでにヴァルケンの世界観に没入させられました。
あと、METAL SLUGシリーズも大好きです。あのドット絵の書き込みとアニメーションの細かさには狂気すら感じます。 - MA-Xさんの代表作といえばCELIAですが、CELIAが生まれた経緯を教えてください。
- CELIAが生まれたのは1989年で、私はまだ高校生でした。
1988年に同人ソフトの処女作『BOMBER CLUB』を完成させた後、次はどんな同人ソフトを作ろうかと考えた時、ふと頭に浮かんだのはペンゴでした。
ペンゴは一般的にアクションゲームに分類されますが、スペシャルボーナス(※1)を狙おうとすると倉庫番のようなパズルゲームの要素が加わります。
敵(スノービー)が迫ってきたり氷のブロックを壊してしまうので、倉庫番のように長考している余裕なんてありません。
迷路が描かれ始めてACT開始のファンファーレが鳴り終わるまでの僅か数秒間で最短手順を脳内シミュレーションをし、思い描いた通りにスペシャルボーナスをゲットできた時は、思わずアクションゲームである事を忘れて興奮してしまいます。
ただ、ペンゴのスペシャルボーナスの要素だけを拝借してパズルを作ったとしても、それは私の作ったゲームが面白いのではなく、ペンゴの面白さにタダ乗りしているに過ぎません。
それに、丁度この時期にベーマガで連載されていた見城こうじ氏の「詰めペンゴ」という企画がまさにそのままの内容だったのです。
「リスペクトしているのであれば、真似るのではなくオリジナルを超えろ」というのが当時から今も変わらない私のゲーム作りの拘りなので、ペンゴでもなく詰めペンゴでもないオリジナル作品になるように、アレンジのアイデアを模索しました。
その時に頭に浮かんできたのが、幼い頃にテレビCMで見たチクタクバンバン(※2)でした。
ブロックの上に軌道を敷き、軌道に沿って何かが動き続ける。それをゴール地点まで運べばステージクリア。
軌道に沿って動くのが目覚まし時計ではチクタクバンバンそのままなので、目覚まし時計を大きな水晶玉に変更。
氷のブロックだけではペンゴとの差別化ができていないし、何よりパズルゲームとしての奥深さが足りなかったので、一歩ずつ押せる「木のブロック」と押せない「岩のブロック」という2種類のブロックを追加しました。
更に、プレイヤーの移動を妨害する目的で「穴の空いた床」を追加して、CELIAの最終的なゲームデザインが完成しました。
※1 ダイヤモンドブロックを一列に並べると得られるボーナス。10,000点だが、一部でも壁に接していると5,000点に減点される。
※2 野村トーイ社が1981年に発売した玩具。オリジナルは米国IDEAL社から同年に発売されたBLOCK THE CLOCK。 - CELIAの開発の中で、楽しかったこと、大変だったことを教えてください。
- 楽しかったことは、PC-8801mkIISR版のステージを作っていた時ですね。
当時、ウチのサークルには私と同じくらいパズルゲームが大好きなハーフドラゴン氏というメンバーが在籍していました。
互いに自作ステージを持ち寄ってはテストプレイを繰り返し、想定外の解き方をされると「今から修正するからもう一度プレイして!」と大盛り上がりでした。
その代わり、CELIAを熟知した2人が互いに協力し合ってステージを作るものですから、気付けば鬼のようなステージばかりになってしまったのは本当に猛省しています(笑)
大変だったことは、X68000版の開発をほぼ一人で作ったことですね。
X68000版を作る事に決めた時、サークル内でX68000を持っているのは私だけでした。
CG原画はテクノポリスやゲーメストに可愛いイラストを投稿されていたてんぷるゆっこ氏(後の加藤マユミ氏)に、CG化の作業は小学生時代からの友人であるSTG氏に、全角かな丸文字フォントはひなた☆すう氏に、それぞれ協力してもらいましたが、それ以外は私ひとりで作りました。
前述のハーフドラゴン氏にステージデータ作成で協力をお願いできなかったのは本当に大変でした。
この一人親方のような開発体制は、現在でも続いています。 - CELIAは様々機種に移植、もしくは移植予定があります。今後はSwitchやSteamといった最近のプラットフォームにも進出する計画はありますか?
- はい。
『CELIA for MSX2』が完成次第、Steamに進出する計画があります。
万人が遊べるプラットフォームであればもっと高く評価されるポテンシャルがあると考えておりますので、先ずはSteam版をリリースして手応えを感じたら、その次はぜひSwitch版を実現したいです。
CELIAというゲームは、一人で遊んでも楽しいのですが、やっぱり数人で集まり知恵を出し合ってワイワイ賑やかに遊ぶのが一番楽しい遊び方だと思います。
SteamやSwitchなら、そういった遊び方に適したプラットフォームだと思うので、気が早いですが今からワクワクが止まりません。
Switchならではのアイデアも既に幾つか考えていますので、ぜひご期待下さい。 - CELIA以外のゲームも紹介してください。
- 1988年に作った処女作の『BOMBER CLUB』という同人ソフトがあります。
ゲーム内容は15パズルなのですが、盤面にはイラストが描かれており、スライドさせたピースの表裏が反転します。
表裏に描かれたイラストを把握しないと解けないので、普通の15パズルより高難易度です。
このゲームを作った頃は、テストプレイやり込み過ぎたせいで、最盛期は10秒程度で15パズルを解けました(笑)
シンプルだけどとても楽しいゲームだったので、いずれSteam向けにアレンジ移植しようかと考えています。 - MA-Xさんの今後の活動について教えてください。
- 当面はCELIAシリーズの開発が続く予定ですが、前述の『BOMBER CLUB』の他にも作りたいゲームのアイデアが幾つかあります。
どんなゲームを作るのか、楽しみに待っていただけると幸いです。 - 今回のインタビューありがとうございました。
MA-Xさんの今後のご活躍をお祈りします!