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電脳おでん村正店長、
ゆきまるの日常や考察。

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レトロゲームにおける錯誤と情報ロンダリング

令和に起きたメタルスレイダーグローリー関連の炎上事件。

先日、ファミコンの隠れた名作と知られる「メタルスレイダーグローリー」関連で大きな騒ぎになったようです。

昨今、レトロゲームはちょっとしたブームになっており、若年層への人気の広がりもみせ、今までシニアゲーマーしか集まっていなかった界隈が活気づいているかように見られます。

一方で、レトロゲームが商売になると見込み、多くの書籍や配信、解説動画なども増えてきていますが、それゆえに様々な偽情報が飛び交い、それなりに大きな問題になるケースが見られます。

今回のメタルスレイダーグローリーも件も、ある有名プログラマーが関わったと証言したという動画に対し、その方は参加していないとグラフィックを担当したよしみる先生から反論があり、一方で動画製作者がよしみる先生を軽んじる発言をしてしまい、問題が一気に延焼、ついにはメインプログラマーの向井氏まで本件を取り扱ったブログのコメント欄に登場するなど、大きな話になってしまいました。

現在はすでに双方が和解したので、この問題自体を掘り返す意図はないのですが、今回の件は最近ブームとなっているレトロゲームをめぐる情報において、長い月日が経過したゆえに起きがちな問題が詰まった事柄と感じたので、例としてあげつつ、私の考えを述べたいと思います。

記憶は平然と嘘をつく。

まず私の見解として、問題は動画製作者がよしみる先生の証言と反論を軽んじてしまった一点のみであって、動画の内容が間違っていたなどは仕方ない部分もあると思うのです。

動画製作者はあくまで取材を元に動画を作っています。インタビュイーがなんらかの錯誤を起こしている可能性は考慮できません。まして業界の著名人であれば、その発言を疑うのはインタビューに応じてもらった仁義もあって容易ではありません(個人的には、こういう話もあるので、相手が誰であれ「インタビュー料」はちゃんと払うべきだと思っています。お金を払えば仕事として依頼したというエビデンスと責任が作れるからです)。

なので、反論を受けたら発言者が誰であるか確認するとか、手持ちの資料をできるだけ拾って確認を行うとか、インタビュイーに確認するなどすれば良いだけのことでした。

正直、レトロゲームに関する話は、30年~40年も前の話になるので、様々な記憶違いがあっても仕方ないことだと思います。それは製作者であっても同様です。

無論、作為的な嘘もあるかもしれませんが、この手の間違いは大半は勘違いだったり、参考にしている市販の書籍や資料そのものの間違いだったりすると思うんです、

人間の記憶は消える上、嘘をつくものです。だからしっかり当時を知る人、当時の資料をあたり、それらの資料を手に入れられないなら、信用できる本を手に入れて読むなどして、確かな知識をため込んでいくしかないと思うんです。

実際私もレトロゲーム配信を行っている中で、勘違いによる発言を行ってしまうことがあり、気づいて後から冷や汗をかいてしまうこともあります。同様に、リスナーの方も勘違いの知識や攻略情報を書き込むことがあります。

また私の配信のみならず、よその私よりも人気のレトロゲーム系配信者のライブに行けば、間違った情報を意気揚々とコメントするリスナーの方も少なくありません。

これらの間違いに悪意はないのです。後から本人が恥ずかしい思いをする以外に罪のない事だと言えます。レトロゲームは20年~40年前のもの。それだけの時間がたてば、ゲームの知識どころか自分の人生における記憶さえ錯誤します。

大切なことなので二回書きますが、人間の記憶は薄れ、忘れられ、そして本人にすら嘘をつくのです。

レトロゲームブームに乗って広がる情報汚染。

SNSの投稿やゲーム実況での発言やコメントなど、揮発的な情報での間違いなら、本人が恥をかくだけで済みますが、本やWeb記事などの長らく形として残る情報となった場合、厄介なことになってしまいます。

最近レトロゲームを扱う書籍が多く出版されています。一時期はいまだにレトロゲーム愛してやまない好事家相手にしかならなかった商売が、若年層にもレトロゲームファンが増えたことによりパイが拡大し、以前よりレトロゲーム関連の書籍が増えてきたという流れです。

内容が怪しいものも少なからず、という状況で、出版後に書籍を読んだ関係者がSNS等で間違いを指摘することが多く発生しています。

中には不確かなWebの情報をまるまる書籍に載せてしまい、どこにも信憑性を感じられない志の低いレトロゲーム本が出版されている始末。

レトロゲーム関連の事柄がお金になるので、この手の本が増えているのですが、結果として、誤ったレトロゲーム情報が広がり、情報汚染が発生しているのは本当に嘆かわしいことです。

書籍を作る時は、情報をしっかりと確認し、できる限りの手段を尽くして正確な情報を載せるべきです。でないと、読者がまるっと書いてあることを鵜呑みにしてしまう。まして、最近配信などでレトロゲームを知り、興味を持った当時を知らない若い読者は、本に書いてあることを疑わずに信じてしまいます。

このあたりの話を「イース通史」などで知られる岩崎啓真さんとTwitterでお話したときも、もう取材元を徹底的にまわるしかないという結論になりました。少なくとも怪しげなネットの情報よりも、可能な限り正確な情報元に取材を行い、本を編む責任を編集者、出版者には求めたいところです。

特にWikipediaに関する情報は、先述の岩崎さんや他のレトロゲーム系ブロガーも指摘していますが、情報ロンダリングということが発生し、いわゆる知識汚染というものが発生しています。

その仕組みは、下の図のとおりです。

誤った知識が(志の低い)書籍とWikipediaを何度もループし、それをレトロゲームに詳しくない人たちが信じてしまい、誤った情報を拡散することで、さらに詳しくない人が信じてしまうという現象です。

これは特に、人間の承認欲求を刺激するSNSという道具によって「教えたい欲」「知識を讃えられたい欲」などと相まって、誤情報が広まりやすい土壌ができてしまっているのもまずい点です。

誰かの些細な承認欲求で情報汚染が止まらなくなり、レトロゲーム界隈の問題に発展しているのは、まさにSNSの負の側面と言えるかもしれません。

そこにレトロゲームブームで一山当てたい出版者が志の低いレトロゲーム書籍を出版することで、情報ロンダリングによる誤情報の固定化が進み、このままだと、10年後には間違った情報が真実だと伝わってしまうおそれさえあります(すでに始まっているとの指摘もありますが)。

間違えに気づいたら早めのアップデートを。

我が姉が以前、Twitterにて「メトロイドのアイテム獲得のサウンドとイースの宝箱を開けたサウンドは一緒」とツイートして多数の「いいね」を貰っていたアカウントに対し、「イースの「lucky宝箱」はメトロイドを参考に作ったと古代さんが某誌で語っていたけど、曲自体は別」と指摘したところ「細かいことはいいんだよ!」と返されたことがあったそうです。

いやいや、別の曲を一緒って、細かくないじゃん。と思うのですが、その人自身にはどうでも良かったのかもしれませんね。

その方も古くからのレトロゲーマーであるとBIOに記載していましたが、本格的にレトロゲームを遊んでいる人でも、このような錯誤を犯し、かつ指摘に対しても素直に聞き入れられないという現状があります。

特にドヤ顔でツイートしていいねを稼いだ後に間違いを指摘されると、撤回するのも気恥ずかしいし、面目ない状況になってしまいます。気持ちは察しますが、しかし間違いはどうひっくりかえっても間違いでしかありません。素直に訂正したほうが、最終的には本人のためにもなります。

しかしこれが個人のツイートならまだしも、書籍レベルで起こしているものもあり、最近のレトロゲームブームに乗っかったにせよ、「情報元はWikipediaか…」という残念な本や記事も多いです。だから、これらの本を読んで信じてしまった人、そしてこれらの情報によって誤情報で固められたWikipediaを読んで確信してしまった人に真実を伝えても、確かに受け入れがたいかなとは思うんですよね。

そういう意味でも、これらの情報ロンダリングや知識汚染は、本当に罪深いと思うのです。

なので間違ったら間違ったで、正しい意見に耳を傾け、自身の情報をアップデートしていくしかないと思うんです。一方でその指摘も間違っている可能性があるので、やはり自分自身で多角的に情報を集めることは必要となります。

私は最近、自分自身でも記憶が曖昧なことが増えたと自覚しているので、最近は商用・同人誌に関わらず、レトロゲーム関連の書籍をできる限り購入し、読むようにしています(上記はゲーム書籍棚の一部)。

これらの本が必ずしも正しいとは限らないのですが、数冊集めて読み合わせれば、情報の突き合わせが可能になります。

これはWebの記事やWikipediaも同様です。当然ですが、Web記事やWikipediaの記事もすべてが誤りとは限りません。しかし、複数のページを読み合わせれば、どれが正しくて何が間違っているのかの判断材料は集めることができます。

今回の誤情報の元となったYoutubeチャンネルも、丁寧な取材と編集でユーザーの信頼を集めていたと聞きます。また、人気のチャンネルゆえに影響力も大きいのですが、たとえ情報の出し方が丁寧であっても、たとえ人気のチャンネルやブログでも、「間違う時は間違う」と認識し、その間違いを責めるのではなく、自分自身でも確かに判断できる材料を持つことが、今後のレトロゲーマーのたしなみになるのではないかと私は思います。

まして我らは、30年来ゲームを愛し続けた「大人」なのですからね。

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